・非定型肺炎=マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、オウム病、レジオネラ肺炎
クラリス(一般名:クラリスロマイシン)とはマクロライド系の抗生物質です。従来のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを改良してできたものであり、ニューマクロライドともいわれています。抗生物質の代表といえるのはβラクタム薬(ペニシリン系、セフェム系等)ですが、マクロライド系も肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌、インフルエンザ菌や百日咳菌など一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、非定型菌のマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなど多くの細菌に対して効力を発揮します。いろいろな細菌に有効なので、呼吸器系の領域を中心に多くの診療科で処方されています。多くは咽頭炎・肺炎・中耳炎などに対する処方です。消化器領域ではピロリ菌の除菌薬としても数多く処方されています。皮膚科領域においては、感染を伴う、表在性/深在性皮膚感染症、リンパ管/節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍などの疾患に対して選択されることがあります。
非定型肺炎を代表にβラクタム不応性感染症に使用されやすい. 天然物として発見されたエリスロマイシンから半合成して作成されており,
クラリスに最も特徴的なのは、一般的な抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効であることです。マイコプラズマは肺炎を引き起こすことで有名ですが、皮膚に感染して皮膚に治りにくい傷を作る原因になることもあります。またクラミジアは性感染症の原因となり、外陰部に痛みや痒みを引き起こします。マイコバクテリウムは皮膚の下で膿を作り、ジクジクとした傷を引き起こす原因菌です。これらはどれも稀な病気で抗生物質が効きにくいのが特徴ですが、クラリスは比較的よく効きます。またクラリスが改良される前の薬であるエリスロマイシンには胃酸によって効力が落ちるという弱点がありましたが、クラリスは胃酸の影響をほとんど受けません。体内にしっかりと吸収されるため、1日2回の服用で十分な治療効果が得られます。その他の特徴として、クラリスはアレルギーを起こしにくいとされています。βラクタム系の抗生物質に対してアレルギーがある人でも使用可能です。ただし他の薬と相互作用を起こしやすいので、飲み合わせには注意が必要です。
病原体は肺炎マイコプラズマ( )であるが、これは自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される。他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、多形態性を示し、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない。専用のマイコプラズマ培地上にて増殖可能であるが、日数がかかり(2~4 週間)、操作もやや煩雑で、雑菌増殖による検査不能例も発生する。肺炎マイコプラズマは熱に弱く、界面活性剤によっても失活する。
感染様式は感染患者からの飛沫感染と接触感染によるが、濃厚接触が必要と考えられており、地域での感染拡大の速度は遅い。感染の拡大は通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くなく、友人間での濃厚接触によるものが重要とされている。病原体は侵入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、上気道、あるいは気管、気管支、細気管支、肺胞などの下気道の粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮の破壊が顕著で、粘膜の剥離、潰瘍を形成する。気道粘液への病原体の排出は初発症状発現前2~8日でみられるとされ、臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと、4~6週間以上排出が続く。
感染により特異抗体が産生されるが、生涯続くものではなく徐々に減衰していくが、その期間は様々であり、再感染もよく見られる。
適切な抗菌薬治療にもかかわらず重症化したマイコプラズマ肺炎の1例
一般的な感染症に対してはクラリスロマイシン1日400mg、非結核性抗酸菌症には1日800mg、どちらも2回に分けて経口で投与します。投与量は年齢、症状にあわせて増減します。またピロリ菌の除菌に用いる場合は他の抗生物質や胃薬と併用して処方されます。
旧感染症発生動向調査では「異型肺炎」の発生動向調査が行われていたが、これにはマイコプラズマ肺炎以外にも、クラミジア肺炎やウイルス性肺炎などの疾患が含まれていた。1999年4月施行の感染症法により、マイコプラズマ肺炎として疾患特異的な発生動向調査を行う目的から、病原体診断を含んだ発生動向調査が行われることになった。
本疾患は通常通年性にみられ、普遍的な疾患であると考えられている。欧米において行われた罹患率調査のデータからは、報告によって差はあるものの、一般に年間で感受性人口の5~10%が罹患すると報告されている。本邦での感染症発生動向調査からは、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。病原体分離例でみると7~8歳にピークがある。本邦では従来4 年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきたが、近年この傾向は崩れつつあり、1984 年と1988年に大きな流行があって以降は大きな全国流行はない。
非定型肺炎疑い ; ペニシリン系薬(β-ラクタマーゼ配合剤)、
潜伏期は通常2~3週間で、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)。特に年長児や青年では、後期には湿性の咳となることが多い。鼻炎症状は本疾患では典型的ではないが、幼児ではより頻繁に見られる。嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状、そして胸痛は約25%で見られ、また、皮疹は報告により差があるが6~17%である。喘息様気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には40%で喘鳴が認められ、また、3年後に肺機能を評価したところ、対照に比して有意に低下していたという報告もある。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴であるとされてきたが、重症肺炎となることもあり、胸水貯留は珍しいものではない。
他に合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群など多彩なものが含まれる。
理学的所見では聴診上乾性ラ音が多い。まれに、胸部レ線上異常陰影があっても聴診上異常を認めない症例があり、胸部レ線検査が欠かせない。胸部レ線所見ではびまん性のスリガラス様間質性陰影が特徴とされてきたが、実際には多いものではなく、むしろウイルス性、真菌性、クラミジア性のものに多いと報告されている。マイコプラズマ肺炎確定例では、大葉性肺炎像、肺胞性陰影、間質性陰影、これらの混在など、多様なパターンをとることが知られている。血液検査所見では白血球数は正常もしくは増加し、赤沈は亢進、CRP は中等度以上の陽性を示し、AST 、ALT の上昇を一過性にみとめることも多い。寒冷凝集反応は本疾患のほとんどで陽性に出るが、特異的なものではない。しかしながら、これが高ければマイコプラズマによる可能性が高いとされる。
現病歴:10日前からの咳嗽と3日前からの発熱を主訴に、近くのクリニックを受診した。咳嗽は徐々に悪化傾向であり、ここ数日は睡眠も妨げられるほどであった。聴診上は明らかな所見は認められなかったが、呼吸数の上昇と酸素飽和度の低下を認めたため胸部X線撮影(図1)が行われ、右下肺野の浸潤影を認めた。追加の病歴聴取から同居家族にマイコプラズマ肺炎で治療中の患児がいることがわかり、マイコプラズマ肺炎としてマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン)を処方され、帰宅となった。内服開始後3日経過しても症状改善を認めず、発熱が続くため、クリニック再診後、精査目的に2次病院総合診療科へ紹介となった。受診時の胸部CT(図2ⒶⒷ、図3)で一部すりガラス陰影を伴う右下葉S8および左肺底部の浸潤影を認めた。同日行われたM. pneumoniaeの遺伝子検査においてマクロライド耐性(M. pneumoniae)を認め、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン)への内服治療の変更が行われた。
[PDF] マクロライド系抗菌薬が無効であったマイコプラズマ肺炎の 1 例
肺炎は肺に細菌やウイルスが感染することにより、高熱・咳・痰などの症状を起こす病気です。放置した場合は、肺から全身に菌がまわり敗血症といった重篤な状態となることがあります。ご高齢の方や免疫力の低下した方が発症した場合、重症化し生死に関わる病気でもあります。実際、肺炎は2020年には日本人の死因の第5位となっています。
初期には風邪と同じような症状となるため、適切な時期に診断し治療を開始することが重要となります。
以前には、定型的な細菌性肺炎と違って重症感が少なく、胸部レ線像も異なる故に「異型肺炎」に分類されてきた肺炎群があり、その後、マイコプラズマ肺炎は「異型肺炎」の多くを占めるものであることが解った。近年「異型肺炎」の病名は使われなくなる傾向にある。
肺炎や非定型肺炎を鑑別する。マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、レジオネラ ..
肺炎の診断の流れは、問診で肺炎を疑い聴診により肺雑音が聴取された場合に、胸部レントゲンやC T・採血検査・喀痰検査を実施し確定診断を行います。
問診では、5日以上高熱が続く、脈や呼吸が早いなどの症状があれば積極的に肺炎を疑い、胸部レントゲン・C T検査・採血検査を行います。胸部レントゲン・C T検査では、肺炎を起こしている部分が、下記のように白く映ることで診断します。採血では、白血球数の上昇や炎症反応の高値がよく見られます。時には尿検査を行い、肺炎球菌やレジオネラ菌に感染しているか調べることもあります(尿中肺炎球菌抗原検査や尿中レジオネラ抗原検査)。喀痰検査では、原因菌を同定するために行います。ただし、喀痰検査により原因菌が判明するのには3−7日と時間を要するため、症状や胸部レントゲン所見、尿中抗原検査により原因菌を推定し治療を行います。
臨床的に細菌性肺炎・マイコプラズマなどの非定型肺炎、百日咳が疑われる場合
肺炎と同じような経過やレントゲン・C T所見となる病気として、器質化肺炎や好酸球性肺炎、薬剤性肺炎などがあります。時には、肺結核や肺癌などが隠れていることがあります。これらは、レントゲンや採血所見などとも合わせて、呼吸器内科専門医による適切な診断が必要となります。
非定型肺炎は病原菌の確定診断が困難である場合が多いため,これらの
症例は35歳女性.2007年2月,発熱,咳嗽が出現,近医で経口セフェム系抗菌薬およびアジスロマイシンを投与されたが改善せず,胸部X線写真で両下肺野に浸潤影を認め,当科紹介入院となった.非定型肺炎を疑いクラリスロマイシン内服およびパズフロキサシン点滴を併用したが解熱せず,呼吸不全の進行を認めたが,ステロイドパルス療法により改善が得られた.血清マイコプラズマ抗体価の有意な上昇および気管支洗浄液のマイコプラズマPCR陽性より,マイコプラズマ肺炎と診断した.一般にマイコプラズマ肺炎は良好な経過をとるとされるが,本症例のように適切な抗菌薬投与にもかかわらず重症な経過をとるものがあり,注意を要すると思われた.
肺炎の流行が全国各地から報告されている。 ここで初期治療にて反応が不十分とされた抗生剤も, クリンダマイシン, クラリスロマイシン,
肺炎と診断した場合、次に重症度を判別します。軽症〜中等症の方は外来にて治療を行い、中等症から超重症の方は入院して治療を行います。重症度の判別には、年齢や血圧、意識障害の有無や酸素化の程度、血液検査結果を使用します。
肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、尿道炎、子宮頸管炎、感染性腸炎、中耳炎 ..
肺炎の治療の基本は、「抗生物質」です。
抗生物質は、原因となっている細菌を殺す薬になります。使用する抗生物質は、原因となる菌により異なります。しかしながら、先ほど示した通り原因菌が判明するまでに時間がかかりますので、診断初期には原因となる細菌を推定し、ある程度どの菌にも効果があるような抗生物質を用いて経験的に治療を開始します(エンピリック治療と言います)。
細菌性肺炎の場合は、ペニシリン系抗生物質(ベニシリン系抗生物質:オーグメンチンやアモキシシリン)やセフェム系抗生物質(セフトリアキソン点滴)、ニューキノロン系抗生物質(レボフロキサシン)により治療を行います。
非定型肺炎の場合は、マクロライド系抗生物質(アジスロマイシンやクラリスロマイシン)やニューキノロン系抗生物質(レボフロキサシン)などを使用します。投与期間は、一般的には5-7日間になります。
[PDF] 小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方
肺炎の治療で重要なことは「抗生物質の服用を中断しない」ことです。症状がよくなってきたといって治療を中断してしまうと、肺炎をぶり返したり、抗生物質の効きにくい耐性菌を誘導してしまいます。抗生物質は、特に副作用などがなければ、処方された日数分を飲み切ってください。
[PDF] Ⅰ.肺炎の重症度分類 Ⅱ.細菌性肺炎と非定型性肺炎の鑑別
適切な抗菌薬治療にもかかわらず重症化したマイコプラズマ肺炎の1例
[PDF] スコアリングを用いた小児細菌性肺炎と 非定型肺炎鑑別に関する検討
また、肺炎の症状に対する対症療法も行います。対症療法は、原因菌に対する治療ではなく、症状を緩和するために行います。具体的には、発熱があれば解熱剤を使用し、咳が強ければ咳を抑える薬を使用します。しかしながら、咳は原因菌を体の外に出そうとする人間の生理的な反応でもあるので、過剰に咳を止めることはあまりよくないとも言われています。
B.2 肺炎 Hospital acquired pneumonia
近年では、耐性菌といって抗生物質が効きにくい菌がしばしば見られます。代表的な菌としては、メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)やβ―ラクタマーゼ非産生 ABPC 耐性(BLNAR)インフルエンザ菌などが知られています。このような菌が検出された場合は、他の抗生物質へ切り替えたり、抗生物質を複数使用し治療を行います。
[PDF] JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症
特にワクチンの接種はとても有効です。肺炎球菌ワクチンはインフルエンザワクチンと併せて接種することで、肺炎での死亡や入院が減少することがわかっています。抵抗力の落ちる65歳以上の方は、接種を行ったほうがよいでしょう。
〈非結核性抗酸菌症〉通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日800mg(力価 ..
肺炎は、適切な時期に診断し治療することで早くよくなる病気です。一方で、風邪などのウイルスが原因の症状には、過度に抗生物質を処方することは効果がなく耐性菌を誘導するため、当院ではあまり行っていません。また背後に肺癌や肺結核などの重篤な病気が隠れていることもあるので、呼吸器内科専門医による診察が重要な病気でもあります。上記のような症状に当てはまり、肺炎が疑わしい場合は、早めに医療機関に受診することをお勧めします。