進行がん患者のがん関連倦怠感に対する デキサメタゾン8mg内服
抗がん薬投与後,24 時間以内に出現する急性嘔吐は,抗がん薬の治療アドヒアランスを妨げる最も大きな要因の一つであり,その予防制吐効果の成否は遅発性嘔吐の治療効果にも影響を及ぼす。したがって,特に催吐性リスクが高度および中等度の抗がん薬投与に際しては,急性嘔吐を未然に防ぎ,さらに遅発性嘔吐の治療反応性を良好に保つためにも,積極的な制吐薬の投与を行う必要がある。以下に急性嘔吐の予防を目的として,抗がん薬投与前に行うべき対処を催吐性リスク別に概説する。
デキサメタゾン8mg内服、 または、デキサメタゾン6.6mg注射の多施設共同第Ⅱ ..
NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン9.9 mg 静注(12 mg 経口)の3 剤併用が推奨される。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2 剤併用に比べ,アプレピタントを加えた3 剤を併用することで制吐作用の著しい改善が示されている~。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬(→ 参照)は,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,薬剤間またその投与経路によって効果に大きな差はなく,用量や投与回数の影響を受けないことから,抗がん薬投与開始前に必要量を単回投与とする。第2 世代5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンは,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,急性嘔吐の予防効果は他薬剤と同等であるが,遅発性嘔吐の予防において優れている(→ 参照)。デキサメタゾンの用量(→ 参照)については,第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬との2 剤併用では13.2~16.5 mg を静注(16~20 mg を経口)とされてきたが,アプレピタントとの併用では,アプレピタントがCYP3A4 を阻害することによりデキサメタゾンの濃度-時間曲線下面積(area under the concentration-time curve; AUC)が増加するため,3 剤併用では9.9 mg 静注(12 mg 経口)に減量する。ただし,副腎皮質ステロイドが抗がん薬として投与されるCHOP 療法などではレジメン内のステロイドは減量してはならない。アプレピタントの投与期間は3 日間が推奨される。ホスアプレピタントはアプレピタントの水溶性を向上させたリン酸化プロドラッグであり,静脈内投与後に体内の脱リン酸化酵素によって速やかに活性本体であるアプレピタントに変換される。ホスアプレピタントはオンダンセトロン,デキサメタゾンとの3 剤併用でアプレピタントとの同等性が示されており,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下での抗がん薬投与30 分前,150 mg の単回使用が推奨される。ただし,副作用として注射部位痛/発赤/血栓性静脈炎の頻度が高いことに留意すべきである。
抗がん薬の催吐性リスクは,高度,中等度,軽度,最小度の4 段階に分類される。良好な治療アドヒアランスを得て,がん治療を円滑に進めるためにも,催吐性リスクの適正な評価と個々の症例に応じた予防的対処を行う必要がある。
始前に 10〜16 mg のデキサメタゾンを投与し,4〜6 mg で維持して症状に応じて漸減する方法がとられること
また,高度・中等度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,5-HT3受容体拮抗薬,副腎皮質ステロイドの2 剤併用が推奨されている。NCCN ガイドライン2017 では,5-HT3受容体拮抗薬の経口連日投与が推奨されているが,シクロホスファミド,エトポシド,テモゾロミドでは,日常臨床において治療目的や放射線治療併用のために副腎皮質ステロイドが併用されていることが多い。
NCCN ガイドライン 2015 では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンをパロノセトロンとデキサメタゾンと3 剤併用で用いるオプションが示された。さらに同2017では,新たにアプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加えるレジメンも提示された。これらは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験や,アプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加える有用性が示された第III相ランダム化比較試験の結果を受けている。ASCO ガイドライン2017 でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された。オランザピンはわが国でも複数の臨床試験が行われた。オランザピンは公知申請により2017 年6 月から,他の制吐薬との併用において成人では5㎎ を1 日1 回経口投与(患者状態により最大1日10㎎ まで増量可能),最大6 日間を目安として先発品と一部の後発品で保険下にて使用が可能となった。本邦における推奨用量,使用方法については未だ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる。慎重投与すべき患者としては,糖尿病患者ならびに高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者であり,使用に際しては副作用の傾眠や血糖上昇に十分注意する。高齢者への投与も慎重に行うべきである。作用点が重複するドパミンD2 受容体拮抗薬ドンペリドン,メトクロプラミド,ハロペリドール,リスペリドンなどとの併用は勧められず,また,睡眠薬との併用には注意を要する。投与量に関してはランダム化第Ⅱ 相試験ではあるが,高度リスク抗がん薬投与に対し3剤併用に加えたオランザピン5 ㎎ と10 ㎎では遅発期の悪心・嘔吐の制御において同等であったとの報告もある。
この度、緩和ケアセンターによって『緩和ケアマニュアル 統合版 2021 年度 Ver.』 ..
軽度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,制吐薬3 種類(5-HT3受容体拮抗薬,デキサメタゾン,ドパミン受容体拮抗薬)を単剤で使用することが勧められているが,最小度リスクに対する制吐薬の予防的使用は推奨されていない。一方,NCCN ガイドライン2017 では,軽度・最小度リスクの経口抗がん薬を含めて,悪心・嘔吐が生じた際にメトクロプラミド,プロクロルペラジン,5-HT3受容体拮抗薬などの連日投与(必要に応じてオランザピンやロラゼパムを併用)が推奨されている。しかし,経口抗がん薬に対する制吐薬の比較試験がないため,これらの推奨される制吐療法の信頼度は低い。ただし,これらの経口抗がん薬の有効性のエビデンスを示した比較試験のプロトコールをみると,Grade 2 の悪心・嘔吐が発現した場合にはおおむね支持療法を行うかまたは休薬し,支持療法によってコントロールできない場合には,投与量を一段階減量する,さらにGrade 3 の悪心・嘔吐が発現した場合は,投与量を一段階減量することが一般的である。したがって,がん薬物療法のエビデンスを示した臨床試験のプロトコールを参考に,日常臨床で使用されている薬剤を使用するほか,食事の工夫,カウンセリングなどの支持療法を実施し,コントロール不良の際は休薬し,抗がん薬を一段階減量して再開するという原則を守り,Grade 3 以上の悪心・嘔吐を発現させず,Grade 2の悪心・嘔吐が継続しないように内服を継続することが求められる。
以前よりわが国では,経口抗がん薬のうちフッ化ピリミジン薬の使用頻度が高く,大腸がんにおけるUFT/ロイコボリン,カペシタビン,胃がんにおけるS-1,肺がんにおけるUFT は比較試験により術後補助薬物療法の有効性が示されている。また,切除不能再発胃がんや大腸がんに対しても,S-1 やカペシタビン,UFT/ロイコボリン,大腸がんにおけるTAS102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)は,ガイドラインで推奨されている治療の一つである。これらの経口抗がん薬は単回での催吐性リスクは少ないが,連日内服による消化器症状がある。
[PDF] がん患者におけるせん妄ガイドライン 2019 年版
基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mg を静注(8~12 mg を経口)の2 剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾンを減量(静注: 3.3~4.95 mg,経口: 4~6 mg)する(→参照)。また,わが国では400 例を超えるオキサリプラチン投与患者に対する第III相ランダム化比較試験が行われ,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下において,アプレピタント/ホスアプレピタント群がコントロール群より全治療期間,特に遅発期の悪心・嘔吐の制御に優れることが示された。
12) 正岡徹,他.造血器腫瘍性疾患におけるMCNU の臨床第Ⅱ 相試験.Chemotherapy.1985; 33: 271-8.
デキサメタゾン)を行います。場合によっては3剤を組み合わせる場合も ..
薬以外の治療法:
身体を動かすことが、患者の日常生活における自律性を維持することにつながることがある。しかし、患者の負担になるような運動は避ける。休息と運動のバランス、活動と睡眠のリズムを把握し、患者に合わせた個別的な対応が望ましい。
[PDF] 花粉症への効果をほのめかした健康茶にステロイドが含有
薬による治療法:
全身倦怠感に対する薬の効果には限界がある。悪液質に伴って生じる倦怠感には、コルチコステロイドの投与が有効な場合がある。デキサメタゾンあるいはベタメタゾン2~4mg/日、プレドニゾロン15~30mg/日を経口投与する。投与後、1週間経っても効果が認められなければ中止する。全身倦怠感を主症状とする抑うつの場合は、抗うつ薬を投与する。
2)高カルシウム血症による症状
■診 断
症状は、食欲不振、全身倦怠感、口渇、便秘などにはじまり、進行するにしたがい、嘔気、嘔吐、傾眠、脱水、せん妄などが現れる。いずれも非特異的な症状であるため、高カルシウム血症の疑いを持たないと見逃す可能性がある。
診断には、血清総カルシウム値を次の式を用いて補正し、血清補正カルシウム値を求める。
血清補正カルシウム値10.3mg/dl 以上を高カルシウム血症と診断する。通常、血清補正カルシウム値12.0mg/dl 以上で症状が出現する。
■治 療
生命予後が月単位と予測される患者に高カルシウム血症が発生した場合、ビフォスフォネート製剤による治療が有効である。ビフォスフォネートが有効なときには血清カルシウム値が24~48時間後から低下し始める。
デキサメタゾンは医薬品成分であり、食品に使用することはできません。 ..
しかし、生命予後が週単位から日単位と予測される患者では、ビフォスフォネート製剤を投与しても、患者の症状マネジメントにつながらないことがある。したがって高カルシウム血症と診断したら、治療するか否かは患者の全身状態、生命予後などを総合的に判断する必要がある。
3)脊髄圧迫による症状
■診 断
脊髄圧迫の場合、90%以上の患者で痛みが先行する。痛みは頚部の屈曲、下肢の伸展や挙上、咳、くしゃみ、無理な運動で悪化する。痛みのある部位には棘突起部の叩打痛がしばしばみられる。痛みの発生から週単位あるいは月単位の後に脊髄横断症状(下半身の運動・知覚障害、膀胱直腸障害など)が出現する。
脊椎単純撮影では、椎骨の破壊像、変形、虚脱を認める。MRI(核磁気診断装置)による検査は、圧迫部位の詳しい同定に有用である。
■治 療
薬による治療法:
コルチコステロイド
デキサメタゾンあるいはベタメタゾン8~12mg/日で開始する。高用量を1週間継続し、2~3週間かけて漸減する。プレドニゾロンを用いてもよい。
第34夜 がん性腹水の緩和について | 都内の在宅医療・訪問診療
薬以外の治療法:
放射線照射
コルチコステロイド投与と同時に開始する。
減圧術
放射線照射やコルチコステロイド投与にもかかわらず症状が進行する場合、次の条件のもとで適応となる。
全身状態がよいこと。
生命予後が月単位あると見込めること。
脊椎転移が単発であること。
4)リンパ浮腫
■診 断
リンパ浮腫は高蛋白性浮腫であり、慢性炎症や線維化を伴う。四肢のいずれかに起こるが、体幹部の浮腫を伴うこともある。原因のほとんどは、がんの再発や転移、がん治療による。とくに腋窩部や鼠径部のリンパ節への転移、骨盤内再発、あるいはリンパ節廓清によって生じる。
症状は、腫大した部位の締めつけ感、運動制限、機能低下などで、腋窩リンパ節転移に伴うリンパ浮腫では神経障害性の痛みを伴うことがある。
デキサメタゾン4 mgまたは16 mgの静注を割り付ける多施設RCTを実施した ..
回答はその時点での情報による回答であり、また紹介した事例が、すべての患者さんに当てはまるものではないことにご留意ください。
は保険適応外のため、これらの薬剤の使用を考慮される場合は緩和ケアチームにご相談くだされば幸いです。
緩和ケアにおいて、鎮痛薬の効果が乏しい疼痛や呼吸困難、悪心・嘔吐、倦怠感、食欲低下、腫瘍熱等による苦痛がある場合、ステロイドの投与を検討する。ステロイドは、腫瘍周辺の炎症や浮腫を減少することにより、腫瘍による圧迫や浸潤を緩和し、局所症状を改善する効果が期待できる。また、局所におけるサイトカインの産生を抑制し、がん悪液質症候群に伴う全身倦怠感や食欲不振を改善する。
(使用薬剤)浮腫の原因となるミネラルコルチコイド作用が少なく、作用時間が長いデキサメタゾン
やベタメタゾンが推奨される(表)。効果がない場合、または、せん妄などの強い副作用が出た場
合は、中止や減量を考慮する(3週間以上使用している場合は、原則、漸減しながら中止する)。
緩和ケアにおいては、症状緩和のために効果の期待できる様々な医薬品 ..
倦怠感、食思不振の原因となっている病態を除外してください。
・貧血
・感染症
・高カルシウム血症
・低ナトリウム血症
・黄疸・肝障害
・口腔内カンジダ症・口内炎(口腔チームに依頼してください)
・脳転移など
が見逃されやすいが治療しうる病態です。
味覚障害があれば、ビタミンB群、亜鉛補給も行ってください。
化学療法のdelayed emasisが疑われる場合は、標準的な制吐対策をしてください。
対症療法としては以下のものがあります。
すべての緩和ケアのフィールドで常勤医として緩和医療を行ってきた著者が ..
60%以上の患者で有意な食欲増加作用がありますが、効果はで2~6週間しか持続しません。
1カ月以上の投与になる場合、消化性潰瘍、血糖異常、ムーンフェイス、精神症状(不眠、せん妄、抑うつ)、カンジダ性口内炎、結核などのステロイドによる合併症を生じるリスクは上がるので、利益が不利益を上回ると評価される場合、選択できる方法と考えられます。
「緩和ケア病床での薬剤師による苦痛緩和の薬物療法に関する規定」が定められ ..
2013年に、倦怠感を主要評価項目としたステロイドの比較試験の結果が発表されました。
進行がん患者84名に対して、デキサメタゾン8mgとプラセボを14日間内服する比較試験が行われ、デキサメタゾン群では15日目の倦怠感の尺度が有意に改善しました。
デキサメタゾンで死亡率低下 WHO「非常に歓迎すべきニュース」
副腎ステロイドは選択できないが、蛋白同化ステロイドは選択できるとき、理論上はヒスロンという選択肢があります。日本では、ヒスロンHは保険適応が乳がん・子宮がんなど特殊なことと、致命的な血栓症の副作用がありますので、実際は一般的ではありません。
[PDF] 緩和ケア処方マニュアル(HP 版)痛み 第 12 版
ヒスロン600~1,200mgで悪液質患者における有意な食欲増進がある(QOL、予後への効果はない)ことが示されており、海外では使われます。国内では保険適応(乳癌)の問題があり、一般的ではありません。また、。