しかし、重要なのは可視光であり、日焼けベッドから放出される危険な放射線である紫外線(UV)ではありません。 ..


日焼け止めを選ぶ際、目安のひとつになるのが、SPFとPAです。SPFはUVBを防ぐ効果の目安で、日焼け止めを塗った場合と塗らない場合を比較し、肌が赤くなるまでの時間が何倍かを示しています。「SPF30」なら、日焼け止めを塗らない場合と比較して、赤くなる時間を30倍遅らせることができるという意味です。「1〜50+」で表示されます。PAはUVAを防ぐ効果の目安です。4段階の「+」マークで表示され、「+」の数が増えるほど防御効果が高いことを意味しています。


そう語る満尾先生は、夏の日光浴が風邪の予防になる理由こそ、紫外線によって皮膚で生成されるビタミンDにあると話します。 ..

じつは、数値の高い日焼け止めを使うことよりも、小まめに塗るほうが大切なんです。日焼け止めは汗をかくと落ちてしまいますので、2〜3時間おきに塗り直しましょう。プールや海に入る場合には、ウォータープルーフタイプを使い、やはり小まめに塗り直しましょう。

――さまざまな日焼け止めが販売されていますよね。どれを選べばいいか迷ってしまいます。

ブルーライトは紫外線に近く、およそ380 ~ 495nm(注)の波長のため、人間 ..

桐村 基本的には全年齢対象ですが、個人的には乳児には塗らなくていいと思っています。理由はビタミンDの生成です。乳児にとってビタミンDは発達に影響するので、過剰に紫外線を防ぐ必要はありません。顔は塗ってもいいかもしれませんが、手足は適度に日光に当たりましょう。高齢者に関しては、加齢とともに皮膚がんのリスクが高まります。「シミ、シワはもう気にしない」ではなく、きちんと紫外線予防をしたほうがいいでしょう。

とのことでした。

「もちろん、紫外線に強い肌の人もいれば、弱い肌の人もいますので、これはあくまで日本人の平均的な肌タイプを基準とした目安とお考えください。また、太陽のエネルギーがもっとも高くなる夏至(6月21日)の前後2カ月は、直射日光が非常に強く、特に太陽が一番高いところにある10~14時の時間帯に直射日光を浴びるのは体によくありません。紫外線は反射光でも十分に取り入れることができるので、この時期は柔らかな日差しのもとで日光浴を行うのが安全でしょう」(満尾先生)

また、ビタミンDの生成にも個人差があるため、より効率的な日光浴を求めるなら、専門の病院でビタミンDの血中濃度を検査し、その変化を医師に調べてもらうのがおすすめとのことでした。

「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」のモバイル版(※3)では、リアルタイムで特定の場所の適切な紫外線照射時間を調べることができます。気になる人はぜひチェックしてみてください。

ど肌の色は黒くなり、紫外線に対して抵抗性があります。白人では紫外線を浴びても赤くなる

――ほかに、日焼け止めを使う際のスキンケアのポイントがあれば教えてください。

また、紫外線量のピークは真夏だけと思っている人が多いのですが、日本では4〜5月から急激に増え始めます。最も少ない冬でも全くないというわけではありません。雪が降れば地表面の照り返しの影響も大きい。肌のことを考えると、日焼け止めは通年つけておくのがいいでしょう。

紫外線対策は、働く女子にとって、すでにポピュラーなものになりました ..

桐村 そうですね。紫外線は日傘だけでは防ぎ切れず、特にUVAは屋内にいても窓ガラスを通過します。また、薄曇り程度の雲では、UVBの80〜90%が透過します。さらに、地表面から反射する紫外線もあります。

――紫外線の悪影響を防ぐには、やはり日焼け止めを塗ったほうがいいのでしょうか。


その中でも紫外線は有害なものという認識が広まり、日焼け止めや紫外線 ..

紫外線には、UVA、UVB、UVCの3種類があります。紫外線の約9割を占めるのはUVAです。UVAは肌の深くまで届き、シワやたるみを引き起こします。UVBは、ビタミンDを効果的に生成することができるので、ある程度は浴びる必要があるのですが、浴びすぎると肌表面に悪影響を起こします。すぐに赤い炎症を起こし、シミや色素沈着の原因になるのがUVBです。UVCはオゾン層に吸収され地上には届きません。

リズムがあることで、昼は紫外線などの外的なストレスに対抗し、夜はダメージ ..

そんな紫外線をブロックするため、皮膚ではメラニンという色素が増えます。そのため皮膚が黒くなります。メラニン自体に肌への悪影響はありません。ただ、過剰なメラニンはシミや色素沈着の原因となり、美容的な観点で問題を感じる人が多いでしょう。

それがケラチノサイトに受け渡されることで紫外線から細胞核を守っています。 ..

桐村 紫外線は、コラーゲンなど皮膚の構造物にダメージを与える活性酸素を皮膚の上で作ります。シワ、たるみ、くすみを引き起こす酸化ストレスの一種です。皮膚の表面を覆う表皮だけでなく、奥深くの真皮まで紫外線が届くと、コラーゲンにダメージを与えて深いシワの原因になります。

紫外線はお肌の大敵ではありますが、実は太陽光の浴び方を工夫することで、健康に ..

――皮膚がんの原因にもなってしまうのは怖いですね。なぜそのような影響があるのでしょうか。紫外線が人体に悪影響を与えるメカニズムについて教えてください。

地表に届く紫外線はUV-A、UV-Bで、UV-Aと比べるとUV-Bの方が届く量が ..

桐村 そうですね。紫外線は浴びすぎることで、やけどのように皮膚に赤く炎症を起こす急性障害と、その赤みが消失したあと、慢性障害を引き起こします。慢性障害には、①シワ・たるみ ②シミ・日光黒子 ③良性腫瘍 ④がんの前段階である日光角化症 ⑤皮膚がん があります。

気象庁から発信されているUVインデックス<紫外線が人体に及ぼす影響 ..

スキンケアの基本は、クレンジングをしっかりしたうえで保湿すること。クリームやウォータープルーフの日焼け止めは付着力が強いので、クレンジングできちんと落としましょう。

室内はダメなの? 紫外線はUVAとUVB、UVCがあり、ビタミ

では、こうした免疫機能や体内時計の調整に欠かせないビタミンDを体内で十分に維持するためには、どのような日光浴を行えばいいのでしょうか。

その参考になる有益な情報として満尾先生が教えてくれたのは、国立環境研究所地球環境センターが運営するWEBサイト「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」(※2)です。ここでは国内12カ所の地域別に、ビタミンD10 μg(4000IU)を生成するために必要となる紫外線の照射時間を公開しています。

ちなみにビタミンD10μgという数値は、成人が1日に必要とするビタミンDの摂取量を15 μgとし、そのうち約5μgを食物から摂取し、残りの10μgを紫外線から体内に取り込むという想定で設定されています。

それによると、

目から入った紫外線が脳内のセロトニン神経を刺激して、睡眠を深くするメラトニン ..

桐村 日光浴の時間は、場所や時刻、天気、皮膚のタイプによって違うので一概には言えませんが、例えば、顔などのシミを防ぎたいところは日焼け止めで守り、手足は適度に日にさらすなど、どこか抜きどころを作るといいですね。私は公園などで手のひらを太陽に向けて散歩しています。

紫外線と同じように太陽から発せられ日没後は少なくなるので、日の出とともに起き ..

加えて日光浴には、もうひとつ大切な効能があると満尾先生は語ります。それは人間の生命活動をつかさどる「体内時計」を整える働きです。

「体内時計とは、生物が生まれながらに持っている、概ね24時間周期で刻まれる生理現象のことで、睡眠や覚醒のリズム、血圧、体温などと密接に関わっています。この体内時計をコントロールするのは視覚領域から生まれる刺激信号とされ、朝に日光を浴びることで約16時間後にメラトニンという睡眠ホルモンを分泌するスイッチが入るといわれています。

体内時計は厳密に24時間ぴったりで動いているわけではありませんから、そのままでは夜型にズレていってしまうのですが、日光浴にはこのズレをリセットして、規則的な生活を送れるようにする働きもあるんですね。そういった意味でも、毎日陽の光を浴びることは大切だといえるでしょう」(満尾先生)

そして、こうした体内時計の調整にもビタミンDが一役買っているとする基礎研究(※1)があると満尾先生は続けます。体内時計の仕組みは、「時計遺伝子」と呼ばれる昼夜で活性の振幅が大きく変わる遺伝子の働きによって起きていることが知られていますが、この基礎研究では脂肪由来幹細胞を使って時計遺伝子の発現を調べる実験が行われたといいます。

「実験時間は60時間で、この間に4時間ごとに遺伝子の発現の確認をしています。条件は、(1)活性幹細胞(培養液に血漿を50%添加)のみ、(2)活性幹細胞+カルシトリオール(活性型ビタミンD3)、(3)通常培養液+カルシトリオール、(4)通常培養液のみ、の4つです。その結果、(1)~(3)に時計遺伝子の発現が確認され、活性型ビタミンD3であるカルシトリオールに体内時計をつかさどる遺伝子の発現作用があることがわかりました」(満尾先生)

あくまで試験管内の実験結果ですが、ビタミンDが細胞に対して、体内時計を調整する刺激剤のような役目を果たしている可能性が示唆されたというわけです。

紫外線を浴びると、皮膚の細胞内に大量の活性酸素が発生します ..

桐村 日焼け止めに含まれる紫外線防止剤には、大きく分けて、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。

・ブルーライトと紫外線カット効果のある下地やUVクリームを使用する。

この事実は、“Dr.ビタミンD”として名高いアメリカのマイケル・ホーリック博士によって発見されました。満尾先生も2004年にアメリカの学会に参加した際に、「ビタミンDと紫外線のメリット」という当時としては非常に画期的なテーマを掲げたホーリック博士の講演を直接聴き、度肝を抜かされたといいます。

以降、アメリカやヨーロッパでは病気予防としてビタミンDを積極的に補充する動きが広がり、日照時間の短い北欧諸国では国策としてビタミンDの摂取を国民に推奨するまでその重要性が知られることとなりました。

また、今でこそ、皮膚ガンや老化の促進、美容の大敵といったイメージから「紫外線はカットすべき」という見方が広まり、太陽光を浴びること自体が避けられていますが、昔は日本でも「日光浴は健康によい」と考えられていた時代があったと満尾先生は語ります。特に結核感染が広まった時期には、サナトリウムと呼ばれる結核療養施設で日光浴を治療のひとつとして採用していたほど。

「しかし、どうして効くのかというメカニズムは長らく解明されていませんでしたが、2006年にビタミンDの投与によってマクロファージ内に抗菌ペプチドの一種である『カテリジン』が作られ、これが結核菌の増殖を抑えていることが報告されました。つまり、日光浴によって体内で増えたビタミンDが、結核菌の進行を防いでいたわけです」(満尾先生)

このようにエビデンスのはっきりしない民間療法として先人が取り入れていた日光浴も、現代では最新の医学的見地からその有効性の高さが証明されているのです。

また、日常的に紫外線ケアをしていても、UVクリームでは防ぎきれない ..

「夏休みに海水浴で真っ黒に日焼けをすれば、冬になっても風邪をひかない。子どもの頃に親たちから言い聞かせられていた先人の知恵は、医学的も正しかったんですよ。昔の人は、日光浴が病気を遠ざけてくれることを経験的に知っていたのかもしれませんね」。そう語る満尾先生は、夏の日光浴が風邪の予防になる理由こそ、紫外線によって皮膚で生成されるビタミンDにあると話します。

実は、私たちの皮膚は紫外線を浴びることで免疫力の維持に欠かせないビタミンDを生成しています。紫外線は波長の長さによって、UVA(320~400nm)、UVB(280~320nm)、UVC(280nm未満)という3つの光線に分けられていますが、この内のUVBとコレステロールから作られた「プロビタミンD3」という物質が皮膚で反応し、ビタミンDの前駆体である「プレビタミンD3」を作り、ビタミンDを生成しているのです。

うっかり紫外線を浴びてしまった肌に、しっかりとうるおいを与えるマスクです ..

免疫力アップに欠かせないビタミンDは、食べ物やサプリメントを通して口から摂取することはもちろん、太陽光、特に紫外線を浴びることによって体内で生成させることも大切です。ところが、コロナ禍での外出自粛によって陽に当たる機会が減ってしまったことから、ビタミンD不足に陥っている人も増えているよう。そこで今回は、「感染症から生活習慣病の対策まで! 最強の予防と呼ばれるビタミンDの新たな可能性」でもインタビューさせていただいた医学博士の満尾正先生に、日光浴の重要性についてお聞きする取材を敢行。著書『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)をもとに、効果的な太陽光の浴び方を教えていただきました。