バイアグラが高地肺水腫に効く? 721号 | 公益社団法人日本山岳会
2008年3月13日のイギリスの大衆紙「デイリー・メール」には、実際に肺高血圧症の2歳児がバイアグラを服用し、病と闘っているというニュースが掲載され、話題になりました。この男の子はバイアグラ1錠を一日4回に分けて服用していたとのことで、その子の母親は、「バイアグラは高価だが、肺高血圧症の薬としてはもっとも安い部類に入る」と、その値段の安さにも触れていました。命にかかわる病気だからこそ楽な治療法である内服薬であることや、比較的安く飲み続けられることは非常に大切な要素であり、その点でもバイアグラは救世主となり得るのです。
高山病予防には、ダイアモックス®の服用が有効であることが知られておりますが、さらにシアリスcialisの併用が有効であるとの報告です。
そして2008年には、肺動脈性肺高血圧症(日本の患者数が約6000人という肺の難病)の新薬レバチオ錠が日本で認可されましたが、実はこのです。この事実からも、バイアグラの肺高血圧症への有用性が裏付けられたと言えます。
さらにレバチオの承認の翌年2009年には長時間作用型のED治療薬のシアリス錠がに製品名を変えて肺動脈性肺高血圧症の治療薬として厚労省から製造販売承認を得て発売開始されています。こちらはレバチオ錠とは違い小児への適用はありませんが、作用機序は同じです。またシアリス錠は2014年にに製品名を変えて前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬として承認を得て発売開始されています。ことになります。
高山病に対するバイアグラの効能について、臨床的な実証はなされていないという.
高度を稼ぐと酸素が少なくなります。下の図で青い線は大気中の酸素分圧をあらわしています。平地で155mmHg くらいだとすると、3 分の2 の100mmHg になるのは標高3000m くらい、半分の70mmHg 台後半が5000m くらい、エベレストの頂上8848m では3 分の1 くらいか。厳しいけど、まあがんばればなんとかなるかな、と思うでしょう。ところが、話はそれでは済みません。体の中の酸素の減り方は驚くべきもので、上の図で赤線で示したものになります。これはひどい。平地で95mmHg くらいだったものが、3000m を越すと半分以下に、5000m で3 分の1、エベレスト頂上ではマイナスになっています。ただし、これは、まったく馴化(じゅんか)が起こらなかった場合の話ですけどね。きちんと馴化すると、大体平地と比較して、富士山で半分、エベレストBC で1/3、エベレスト頂上で1/4 になっています(下の図)。
酸素は我々ヒトにとっては必須なエネルギー材料です。それがエベレストBC(5200m)で1/3 しかなければ、悪くすればおだぶつ、死なないまでも体に様々な失調がでるのは当たり前のことです。だれでもこんな環境に置かれれば(ヘリコプターで降ろされれば)おかしくなるに決まっています。急に高度をあげた(低酸素状態になった)際にでてくるこの失調を「急性の高山病」と呼んでいます。
そこに新たな救世主として注目を集めたのがバイアグラでした。アメリカの大学により、新生児肺高血圧症に対して、特に重症の子どもにバイアグラの有用性が示唆される結果が報告されたのです。バイアグラの有効成分であるため、このような結果が得られたのだと推測できます。
高山病予防薬 | 医療法人社団謙悠会 北柏ライフタウンクリニック
標高が上がれば空気が薄くなり、酸素も減ります。それに合わせて酸素と結びついたヘモグロビンも減ります。したがって高度を上げていくと、SpO2 は低下しますが、その程度は標高の上げ方によって違いますし、個人差(もともとの呼吸機能や馴化の違い)もあります。実際はどの程度でしょうか。表1、図1に、エベレストのクンブー谷のトレッキングを例にして示します(参考に日本の剣沢でのデータも示す)。
以下に示す図表は、日本の代表的なトレッキング会社各社と高所医学の専門家などで構成されている「高所低酸素血症研究会」がその各社主催ツアーに参加された方々のご協力を得て作成したものです。酸素を吸ったり途中で動けなかったりした方のデータは除いてあります。つまり普通に動けた方々だけが対象です。
表1 エベレスト街道での酸素飽和度SpO2(対象者414 名, 17-71 歳)
下界ではSpO2 が90%を割ると酸素吸入も考える、80%を下回ると危ない、と考えるのが普通ですから、エベレスト街道のトレッカーはおどろくべき低酸素状態で行動していることがわかります。
表1、図1は酸素を吸うことなく、目的地まで行けた人たちのデータのみを集計しているので、各標高において平均値より低い人でも、実際は問題なく登れていたはずです。平均値よりどれくらい低い数値までよしとするかが問題ですが、「標準偏差の2 倍まで」を提案します。各高度で平均値から標準偏差の2倍を下回っている方は馴化が追いついていないと考えられます。危険値として示した値、図1で緑の線で示したのがそれです。これを下回るようだと標準的とはいえません。もちろんSpO2 でわかるのは、どれだけ体に酸素が取り入れられているかであって、体調のすべてを代表しているわけではないので、ほかの自他覚症状も合わせて体調を判断しなくてはいけません。
高山市にはED治療が受けられる病院が 8件あります。(2025年1月17日現在)
ご注意! 現在、一般受診者が非常に多いため、高山病予防の ..
頭痛が最もよく見る症状なのですが、体中どこでも低酸素状態なのでやられる臓器によりどんな症状でも起こりえます。国際的には以下のようにまとめる約束です。
a.急性高山病----新しい高度に到達した際に起こる症状。頭痛、及び以下の症状のうち少なくとも1つを伴う。消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐)、倦怠感または虚脱感、めまいまたはもうろう感、睡眠障害。2500m の高度に急激に登高すると25%に上記症状が3個以上現れる。3500m の高度ではほとんどの者が上記を経験しうち10%は重症化するとされる。
b.高地脳浮腫----重症急性高山病の最終段階と考えられる。急性高山病患者に精神状態の変化か運動失調を認める場合。急性高山病症状がない時は両者とも認める場合。
c.高地肺水腫----以下のうち少なくとも2つの症状がある。安静時呼吸困難、咳、虚脱感または運動能力低下、胸部圧迫感または充満感。また以下のうち少なくとも2つの徴候がある。少なくとも一肺野でのラ音または笛声音、中心性チアノーゼ、頻呼吸、頻脈。
新生児肺高血圧症とは、正期産児あるいは過期産児に生じる肺血管構造の障害のこと。胎盤呼吸から肺呼吸への切り替えがうまくいかず、肺への血の巡りが悪くなって低酸素症を引き起こす病です。分かりやすく言うと、どこにいても高山病のような症状がずっと続く病といったイメージです。人工肺を使用するくらいしか治療法が見つかっていない難病でもあります。
呼吸器内科・高山病 · 舌下免疫療法 · がん漢方薬 カイジ · ボトックスによるワキ汗治療 ..
ED治療薬として絶大な支持を集めるバイアグラですが、実はそのポテンシャルはEDに収まりません。2006年に、「新生児肺高血圧症」への効果があると認められました。
よくある質問 :: 腎臓・泌尿器科専門病院 高山病院(福岡県筑紫野市)
急激に高度を上げすぎないこと、これが基本です。ゆっくりした日程であれば低酸素状態に体の馴化が追いつきます。一般にSpO2 の値が90%を割り込むと体に大きな低酸素ストレスが加わり始めます。これが第一の壁。これをなんとかこなしたあとでも、次に80% を切る際にはかなり危険な低酸素状態に入るといってよいでしょう。図1をみると、それぞれ標高3000m が第一の壁、4600m が第二の壁になりそうです(各人によってこの高度は変わってくるでしょう)。多くのヒトがトレッキング中に迎える高度の壁です。
女性がバイアグラを食べることで高山病を予防することができますか?
以上の高度は、エベレスト街道だとナムチェバザールに到着する日そしてツクラの坂を登る日に相当します。この高度を初めて越す際には睡眠・休養を十分とるようにしましょう。食事、特に行動中のまめな糖分と水分の摂取は重要です。お酒を飲みすぎたり、下痢を放置するのは危険。脱水やその逆の浮腫を招きやすい。おいしそうな現地食も行きは我慢しましょう。風邪のようなウイルス感染も危険因子です。頻繁な衣服の着脱によって保温を適切にし発汗をコントロールすることも大切。過激な運動も、一方じっとして動かないのも禁物。他人の目を気にせずのんびり着実に歩きましょう。高山病になりやすい体質は一部のひとにはありそうですが、多くの場合は上記に気をつけることで防いだり症状を軽くすることが可能です。海外トレッキングに出かける直前に富士山に1−2回登ってトレーニングしておくのも有効です。
ギンコ(イチョウの葉エキス)が急性高山病予防に効く、という報告があります。米国のHackett らが積極的に薦めています。イチョウの葉に含まれる物質がもつ活性酸素消去作用・血管拡張作用・抗炎症作用が効果をもつのではと言われていますが、きっちりした医学的な証拠はまだ得られていません。少量のアスピリンには「血液を固まりにくくする」効果があります。脳梗塞や心筋梗塞を患った方は長期にわたってこの少量アスピリンを服用するのが一般的です。不整脈があって血栓ができやすいと考えられている方には予防的にのんでいただくこともあります。さて、登山中はどうでしょう。脱水は高所での4大障害のひとつでした。上記の疾患のある方、下肢に静脈瘤が出やすい方、脱水が予想される方などは考慮の余地があるかもしれません。
高山病予防薬 ダイアモックス · トラベル予備薬 · 健康診断 · 診断書・証明書 ..
シアリスの服用により、標高4,100~4,700m地点で、軽度の高山病様の有害事象が認められています。 対象群に比較し、頭痛の発生頻度が上昇しています。 これらは、登頂日には認められていません。
公費でバイアグラ大量購入 高山病対策と釈明 小じわ改善の注射剤も
図3は標高3500m におけるSpO2 の年齢分布です。高齢者に低下する傾向があるのが読み取れます。50 歳以上と以下(黒と青)を比較すると違いがはっきりします。またこの高度での危険値を下回るのはほとんどが50 歳以上であることもおわかりいただけるでしょう。この差は他の高度でもあきらかです。50 歳以上になれば若者より2-3%低くても当然であると考えましょう。これ以上の高度を目指す高齢者隊は緊急用の酸素ボンベを忘れずに。低酸素はヒトの弱いところを狙います。きちんと事前に健康のチェックを行いましょう。慢性の疾患があって服薬をしている場合など主治医に緊急時の対策を確認しておかねばなりません。トレッキングの組織者やリーダーにもその情報を前もって知らせておきましょう。
バイアグラの服用により、酸素摂取量が増加し、運動耐容能が向上し、 マラソン ..
注意深く自分自身を観察します。チェックシートを利用しましょう。軽い頭痛程度なら、アセトアミノフェンやブルフェンなどの鎮痛剤を服用する程度で済みます。注意して行動を継続します。頭痛に他の症状が加わりかつ酸素飽和度SpO2 が各高度での平均値をかなり下回るようでしたらダイアモックス(250mg)を1日朝夕1錠づつ(体の小さい日本人は半錠づつでもよい)服用すると効果的です。ダイアモックスは脳の呼吸中枢を刺激する作用があり、低酸素で「眠ってしまった」脳を刺激し酸素の取り込みを増やします。症状が消えSpO2 が改善しても1-2 日間は継続して服薬します。ゆっくりした日程の場合でも、以前のトレッキングで高山病に悩まされたことのある方、やむを得ずゆっくりした日程が取れない場合(レスキュー活動の場合や飛行機やヘリで一気に4000m 近くに到達する場合など)は、まだ低い高度にいる出発当日の朝からダイアモックスを予防的に服薬しても構いません。脱水を防ぐために適切な摂水は大切です。血栓予防の少量のアスピリン服用も考えます。症状があるうちは新しく高度を稼ぐことは禁物、休養を兼ねて停滞です。3500m を越え、症状がかなりきつくSpO2 が危険値を割った場合、とくにそれが高齢者の場合は酸素の使用を躊躇してはいけません。馴化を遅らせるから、などと使用を控えるむきもありますが、エベレストの頂上を目指すわけではないのです。トレッキングを楽しむためにここに来ているのです。苦痛を我慢するなど馬鹿げています。高齢者の場合はとくに早め早めの酸素吸入が効果的です。酸素吸入中のSpO2 が90%を超える程度の流量を10 分間吸入することから始めます。低酸素によって脳に貯まってしまった有害な代謝物を排除できれば、これだけで症状が一気に改善されることがあります。酸素吸入を止めるとすぐ元の木阿弥になってしまう場合は、吸入時間を少しづつ伸ばしていきます。夜間睡眠時の少量の酸素吸入はとても効果的です。もちろん酸素ボンベの数と相談ですが。よく携帯式のスプレー酸素缶をお持ちの方を見かけますが、せいぜい数分しかもちません。費用(重量)対効果比を考えるともったいない限りです。停滞しても改善が見られない場合一つキャンプ地を戻すことも考えます。もちろん急性高山病患者を一人だけで下降させてはいけません。
※このページの医療機関・薬局は岐阜駅(JR高山本線) を中心に直線距離の近い順で表示されています
重篤な高山病の発症は、特に極高所を目指す登山家にとって、致命的な危険となりえます。
一般的には、一日あたり300m程度の登山は、重度の高山病の予防になるとされていますが、キリマンジャロやヒマラヤなどでは、 より短時間での極高所の登頂を目指すことになり、推奨される高地順応時間を満たすことは稀です。
このような短期間の登頂は、ダイアモックス(アセタゾラミド)を使用していても、重度の高山病を高率で引き起こします。 実際に、ダイアモックス(アセタゾラミド)を予防的に服用していてもキリマンジャロ登頂では、 80%程度に高山病が発症したとの報告もあります。 さらには、高山病の発症は90%におよび、高地肺浮腫は18%、高地脳浮腫は13%に認めたとの報告もあります。
キリマンジャロでは、1996年から2003年にかけて、14名の登山家が高山病の発症により命を落としたとされています。
一方で、勃起不全の改善効果が効いている最中に飲み続けても勃起の硬さが強まる訳ではなく、バイアグラ ..
韓国の大統領府でバイアグラを大量購入したのが問題になっているそうです。
ニュースサイトには朴槿恵(パククネ)大統領が今年5月にアフリカを歴訪した際、「(随行職員の)高山病の予防、治療のために購入した」と説明したようです。
なかなか刺激的なニュースです。
高山病にED治療薬であるバイアグラが効くのかということを考える前にまずは高山病について説明しましょう。
そもそも高山病とは高所における酸素濃度低下により引き起こされる病気です。
特に肺や脳などに影響を引き起こします。
軽めの高山病では頭痛、疲労、めまい、吐き気などの症状が起きます。
重症の高山病では肺で低酸素による肺動脈圧の上昇が間質性および肺胞性の肺水腫を引き起こし呼吸困難になります。脳でも同様に脳浮腫(脳のむくみ)により錯乱、意識障害などが生じることがあります。
高山病の治療としては下山する、酸素を吸うなどがありますが内服薬としてはアセタゾラミドが最も有名です。
ダイアモックスという商品名でも知られるこの薬は炭酸脱水素酵素阻害薬であり体の中を酸性側に傾けます。
高山病では過換気になるため体はアルカリ性に傾いているためそれを中和することで症状を改善します。
登山の前日から内服することで高山病予防にも使えます。
その他に、ステロイドやニフェジピンなどの降圧薬の使用も報告があります。
そしてバイアグラやシアリスも高山病に使用されたという報告はあります。
ではバイアグラは本当に高山病に効くのでしょうか?
バイアグラやシアリスは肺血管抵抗を下げる作用があるため肺高血圧症という病気の治療薬としても実際に市販されています。
高山病では低酸素性肺血管収縮(HPV: Hypoxic pulmonary vasoconstriction)という現象により肺高血圧になっています。
つまり肺高血圧の治療という観点からだとバイアグラの使用は理にかなっています。
では文献的考察を加えてみるとどうでしょう?
Pubmedからいくつか文献を調べてみました。
まずは2013年のMeta-analysis of clinical efficacy of sildenafil, a phosphodiesterase type-5 inhibitor on high altitude hypoxia and its complications. という論文では過去の論文を調査してバイアグラの高山病に対する有効性を検討しています。
結果としては確かに数値としては肺高血圧は改善するのですが体の酸素飽和度は改善させないし、高山病の症状も改善させなかったということです。つまり高山病に対するバイアグラの有益性は認められませんでした。
また、Sildenafil citrate for the prevention of high altitude hypoxic pulmonary hypertension: double blind, randomized, placebo-controlled trial. という論文ではバイアグラを使用群の方がプラセボ群よりむしろ高山病の症状が悪くなったと書かれています。
このような論文から考えるとバイアグラで高山病予防や治療というのは一般的ではないと言えます。
普通に考えればアセタゾラミドを選択するべきでしょう。
韓国の大統領の場合、他にも大きな問題がありすぎてついでに叩かれている感もありますが、バイアグラを高山病予防や治療のために購入したというのは若干苦しい気がします。
いずれにせよ今回のニュースで誤解が起きるといけませんのでコラムで取り上げてみました。
岐阜県高山市 - 通販 - LINEアカウント連携でPayPayポイント毎日5%( ..
早急に下に降ろさなければなりません。下降手段(ヘリコプターなど)を待っている間に手をこまねいていてはいけません。大流量酸素を吸入させ、ガモフバッグなどの携帯型加圧バッグを使用します。脳浮腫にはデキサメサゾン、肺水腫にはニフェジピンが有効です。両者とも劇薬ですので医療関係者が同行するか無線や衛星携帯電話などで連絡できる場合のみに限ります。最近では、バイアグラが高地肺水腫に有効であることが分かってきました。バイアグラは平地でも肺高血圧症の患者さんに投与され肺高血圧改善にとてもよい成績を残しています。これから行われるであろうきちんとした研究報告が待たれます。
高山病予防薬 ダイアモックス | うかい医院 UKAI CLINIC
2006年から2009年にかけて、5グループ68名の参加希望者があり、55名の参加者は、 参加基準を満たし、51名がこの研究を完遂しております。
51名の参加者中8名に重度の高山病の出現を認めています。 重度の高山病は、シアリスcialis服用群で、有意に発症率が低い事が明らかになりました。
(シアリス服用群4.2%vs対象群25.9%:オッズ比8.05)
最も差が生じたのは、高地肺浮腫の発症で、シアリス服用群で、4.2%であったのに対し、対象群で22.2%に認められています。
重度の高山病と診断された者は、登頂日に症状が増悪しています。登頂から4-5日目、シアリスcialis群で、対象群に比較しても、高山病が増悪しています。