グルココルチコイドであるデキサメタゾンは術後の悪心・嘔吐を予防するが,手術部位感染のリスクを上昇させる可能性への懸念がある.
術後の(PONV)は30%以上の患者に認められ1,2)、手術の種類によりリスクは異なるものの、システマティックレビューでは腹腔鏡下手術と手術時間の延長が独立した予測因子であることが報告されている3)。消化管疾患患者の多くは入院時に栄養不良を認め4)、PONVは回復および退院の遅延につながるため、PONV予防は非常に重要である。
[PDF] 術後悪心嘔吐に対するデキサメタゾン予防投与は有効か
基本的には、手術終了時やその終了直前に制吐剤投与を行いますが、デキサメタゾンは効果発現まで2時間 要するため麻酔導入時の投与が推奨されています。最新のガイドライン2)では、表1の6因子のうち1-2因子該当する場合は表3から2剤、3因子以上該当する場合は3-4剤の予防投与が推奨されています。当院では、表1のリスク因子が1-2因子該当する場合、表2から2種類(例:オンダンセトロン&デキサメタゾンやデキサメタゾン&プロポフォール麻酔)、3因子で3種類、4因子以上で4種類(オンダンセトロン、デキサメタゾン、ドロペリドール、プロポフォール)の薬剤を予防投与しています。
事前に投与された制吐剤とは別の作用経路の制吐剤を投与することが推奨されています。例えば手術室でオンダンセトロンが投与されている場合はドロペリドールを投与する、デキサメタゾンとドロペリドールが既に投与済みならオンダンセトロンを投与するなどです。他に投与可能な薬剤がなく前回投与から6時間経過していれば5-HT3:セロトニン受容体拮抗薬(オンダンセトロン4mg、グラニセトロン1mg)の2回目の投与も考慮されます。
D群50%、 C群50%であり、デキサメタゾンの PONV予防効果は認められなかった。 C群内で PONVの有無によ
PONV に使用できる制吐薬
欧米ではであるデキサメタゾン(デカドロン)の使用が推奨されています、わが国ではPONV に 保険適応がありません。日本でも使用できる主な薬剤は、 オンダンセトロン塩酸塩水和物 、ドロぺリドール(ドロレプタン® )、プロクロルペラジン(ノバミン® )、 メトクロプラミドメシル塩酸塩(プリンペラン® )などであります。
また術後病棟でPONVが起きた場合は、麻酔による影響以外にも他の原因検索をすることは重要です。過剰なオピオイド投与(鎮痛評価によりIV-PCA投与量の減量、硬膜外PCA薬液をオピオイドなしに変更するなど対応検討)や機械的な腸閉塞がないか、咽頭の血液や喀痰の貯留などがないかを確認しましょう。
デキサメタゾン酢酸エステル dexamethasone acetate (別名:酢酸デキサメタゾン).
Dexamethasoneは強力な副腎皮質ステロイドであり、4,000例以上を対象にした臨床試験においてPONVの発現頻度を減少させたが5)、本試験で腸管手術を受けた患者は僅かであった。一方、腸管手術を受けた計100例を対象にした2つの単一施設による臨床試験では、Dexamethasoneによるベネフィットを認めなかった6,7)。ステロイドの長期使用には創感染や縫合不全などのリスクがあるが、単回投与ではリスクが増加しないと考えられ、甲状腺手術を受けた患者のメタアナリシスでは8~10mgがPONV抑制に最も効果的であったことが報告されている8)。また、Dexamethasoneは手術による炎症を軽減する可能性があることから、術前投与が最も効果的であると考えられた9)。そこで、腸管手術を受ける患者に対するDexamethasoneのPONV抑制効果を検討する盲検下多施設無作為化比較試験、DREAMS試験が行われた。
表2 PONV予防薬(日本で投与される一般的な薬剤名と推奨投与量の例)
デキサメタゾン+ハロペリドールorドラセトロン,デキサメタゾン+オンダンセトロン+ドロペリドール,
デキサメタゾン(商品名:デカドロンほか)は強力な鎮痛薬であり、かつ制吐薬である。人工膝関節置換術(TKA)後のデキサメタゾン投与の利点は不明であったが、韓国・カトリック大学校議政府聖母病院のIn Jun Koh氏らは無作為化試験にて、ラモセトロン(同:ナゼアほか)単独投与に比べ、ラモセトロン+デキサメタゾンの予防的投与のほうが、創傷合併症のリスクが増加することなく術後嘔吐および疼痛が減少することを明らかにした。Clinical Orthopaedics and Related Research誌オンライン版2013年5月4日号の掲載報告。
本研究の目的は、ラモセトロン+デキサメタゾンの予防的投与がラモセトロン単独投与と比較して、術後悪心・嘔吐(PONV)ならびに術後疼痛を減少させ、TKA後の創傷合併症のリスクを増加させるかどうかを評価することであった。
TKA施行予定患者269例を、手術1時間前にデキサメタゾン10mgを投与し手術直後にラモセトロンを投与する群(Dexa-Ra群、135例)と、ラモセトロン単独投与群(Ra群、134例)に無作為化し、術後0~6時間、6~24時間、24~48時間および48~72時間におけるPONV発生率、悪心の重症度、制吐薬の要求頻度、完全抑制率、疼痛の程度およびオピオイド使用量を調べた。
また、術後少なくとも1年以内に、創傷合併症および人工関節術後感染について評価した。
主な結果は以下のとおり。
・Dexa-Ra群では、術後72時間までのPONV発生率が低かった。また、術後0~6時間における悪心の重症度が低かったが、6~72時間においてはそうではなかった。
・概して制吐薬のレスキュー使用は少なく、完全抑制率はDexa-Ra群で高かった。
・Dexa-Ra群は疼痛の程度が低く、術後6~24時間および全期間を通してオピオイド使用量が少なかった。
・両群間で創傷合併症の頻度に差はなかった。人工関節周囲感染症は各群1例ずつにみられた。
■「デキサメタゾン」関連記事
大腸および小腸の手術では、麻酔導入時にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を追加すると、標準治療単独に比べ術後24間以内の悪心・嘔吐が抑制され、72時間までの制吐薬レスキュー投与の必要性が低減することが、英国・オックスフォード大学のReena Ravikumar氏らが実施したDREAMS試験で示された。デキサメタゾン追加による有害事象の増加は認めなかったという。研究の成果は、BMJ誌2017年4月18日号に掲載された。術後の悪心・嘔吐(PONV)は、最も頻度の高い術後合併症で、患者の30%以上にみられる。腸管の手術を受けた患者では、PONVは回復を遅らせることが多く、術後の栄養障害を引き起こす可能性もあるため、とくに重要とされる。デキサメタゾンは、低~中リスクの手術を受ける患者でPONVの予防に有効であることが示されているが、腸管手術を受ける患者での効果は知られていなかった。
本研究は、英国の45施設が参加したプラグマティックな二重盲検無作為化対照比較であり、2011年7月~2014年1月に1,350例が登録された(英国国立健康研究所・患者ベネフィット研究[NIHR RfPB]などの助成による)。
対象は、年齢≧18歳、病理学的に悪性または良性の病変に対し、開腹または腹腔鏡による待機的腸管手術を施行される患者であった。
すべての患者が全身麻酔を受け、麻酔科医が決定した標準治療として術前に制吐薬(デキサメタゾンを除く)が投与された。デキサメタゾン群は術前にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を受け、対照群には標準治療以外の治療は行われなかった。
主要評価項目は、24時間以内に患者または医師によって報告された嘔吐とした。副次評価項目は、術後24時間以内、25~72時間、73~120時間の嘔吐および制吐薬の使用、有害事象などであった。
デキサメタゾン追加群に674例、標準治療単独群には676例が割り付けられた。全体の平均年齢は63.5(SD 13.4)歳、女性が42.0%であった。腹腔鏡手術は63.4%で行われた。直腸切除術が42.4%、右結腸切除術が22.4%、左/S状結腸切除術が16.4%であった。
24時間以内の嘔吐の発現率は、デキサメタゾン群が25.5%(172例)と、標準治療群の33.0%(223例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.92、p=0.003)。1例で24時間以内の嘔吐を回避するのに要する術前デキサメタゾン投与による治療必要数(NNT)は13例(95%CI:5~22)だった。
24時間以内に制吐薬の必要時(on demand)投与を受けた患者は、デキサメタゾン群が39.3%(265例)であり、標準治療群の51.9%(351例)よりも有意に少なかった(RR:0.76、95%CI:0.67~0.85、p<0.001)。また、術前デキサメタゾン投与のNNTは8例(95%CI:5~11)だった。
25~72時間の嘔吐の発現に有意な差はなかった(33.7 vs.37.6%、p=0.14)が、制吐薬の必要時投与はデキサメタゾン群が有意に少なかった(52.4 vs.62.9%、p<0.001)。73~120時間については、嘔吐、制吐薬の必要時投与はいずれも両群間に有意差を認めなかった。
死亡率は、デキサメタゾン群1.9%(13例)、標準治療群は2.5%(17例)と有意な差はなく、両群8例ずつが術後30日以内に死亡した。有害事象の発現にも有意差はなかった。30日以内の感染症エピソードが、それぞれ10.2%(69例)、9.9%(67例)に認められた。
著者は、「PONVの現行ガイドラインは、おそらく過度に複雑であるため広範には用いられていない。今回の結果は、腸管手術を受ける患者におけるPONVの抑制に簡便な解決策をもたらす」としている。
初期治療はオンダンセトロン 2mg とデキサメタゾン 4mg の単回静注が有用であ
主要評価項目は術後24時間以内の嘔吐、副次評価項目は術後の嘔吐回数(5分間の間隔で別エピソードと定義)、術後制吐薬の使用、PONVの重症度、疲労、経口摂取までの期間、入院期間、健康関連QOLであった。大規模臨床試験の結果5)に基づき、Dexamethasoneにより術後24時間以内のの発現頻度が37%から28%に減少すると仮定し、両側α=0.05、検出力80%で必要症例数は950例であった。なお、その後、予定以上の集積を認めたことから検出力を90%とし、最終必要症例数は1,320例とされた。
婦人科腹腔鏡手術における術後悪心・嘔吐(PONV)に対するPONV予防薬投与による改善効果の検討 ..
最新のガイドライン2)ではPONVリスク因子が一つでもあれば、予防的に制吐剤投与を行うことが推奨されています。制吐剤は作用経路の異なる複数剤を組み合わせて予防投与することが効果的です。また術中麻酔管理として、吸入麻酔を避けたり、術中・術後のオピオイド使用量を減らすなどリスクの低減が検討されます。日本で予防投与される一般的な薬剤(静注薬)を表2に示します。海外でPONV予防・治療薬のゴールデンスタンダードだった5-HT3受容体拮抗薬ですが、2021年に日本でも保険適応となっています。
[PDF] 2021 年 7 月 31 日の間に 附属病院にて全身麻酔手術を受けられた方
主要評価項目である術後24時間以内のの発現率は、標準的ケア群33.2%、Dexamethasone群25.5%であり、Dexamethasoneで有意な低下を認めた(Risk rate=0.77, 95% CI: 0.65-0.92, p=0.003)。術後24時間以内のを発現した395例中251例(63.5%)は治療医および患者双方によりエピソードが記録され、119例(30.1%)は患者のみ、25例(6.3%)は治療医のみの記録であったが、Dexamethasoneによる治療効果は、治療医のみの記録、患者のみの記録でも同様であった。なお、術後25~72時間のは両群に有意差を認めず(Risk rate=0.90, p=0.14)、術後73~120時間では両群で同程度であった(Risk rate=1.02, p=0.87)。術後24時間以内のにおけるサブグループ解析では、手術の種類、術後回復力強化プログラム(ERAS)施行の有無、喫煙状況、ASA grade、術後疼痛緩和の方法、性別のいずれにおいても有意差を認めなかった。
―PONV(悪心嘔吐)予防に有効なデキサメタゾンの用量についての後ろ向き研究」へのご協
また簡便にリスク数に伴う発症頻度を予測する方法として、Apfelらのリスクスコア3)が有名です。女性、非喫煙者、PONV歴あり/乗り物酔い、術後オピオイド使用の4つの因子がいくつ当てはまるかの合計数で発症リスクを予測できます。因子数0で10%が発症、1因子で20%、2因子で40%、3因子で60%、4因子全て当てはまると80%、と覚えやすい数値になっています。
[PPT] デキサメタゾン静脈内投与の鎮痛効果 帝王切開後疼痛に対する
以上のように、腸管手術を受ける患者に対する術前Dexamethasone投与により、PONVの発現率を有意に低下させ、救済治療の必要性を減少し、経口摂取回復までの期間を早めた。また、有害事象の増加を認めなかったことから、腸管手術を受ける患者に対しては術前Dexamethasone投与が推奨されると考えられる。
PONV予防、鎮痛の2点に効果のあるデキサメタゾンは帝王切開の周術期において貴重 ..
手術後の悪心/嘔吐は30%以上に認められ、術後の回復や退院の遅延につながることから、その発症予防は非常に重要である。これまでに、副腎ステロイドのDexamethasone投与により、手術後の悪心/嘔吐の発症頻度が減少するという報告はあるものの、消化管手術を対象とした大規模な比較試験はなかった。
PONV 予防のデキサメタゾン:無作為対照試験のメタ分析最新版
しかし、リスクの高い患者には予防策を講じることが推奨されています。前述したApfelの4大リスク因子の数によってリスク分類し、リスクに応じた対策を行います()。
デキサメタゾン注射薬は一時的に血糖値を上げることがありますが、最近の研究で術後の感染のリス
Dexamethasoneの投与方法は、手術開始直前に8mgを単回投与するもので、主要評価項目である術後24時間以内の嘔吐の発現率は、標準的ケア群(Dexamethasone非投与群)の33.2%に比べ、Dexamethasone投与群は25.5%であり、有意に低下していた(p=0.003)。また、術後72時間までの術後の制吐剤使用、術後24時間以内の重篤な悪心/嘔吐の発現頻度、術後24時間以内の経口摂取の開始割合などの副次評価項目でも、有意に、Dexamethasone投与群が優れていた。一方、感染症や縫合不全などの有害事象の発現については有意差がなかった。
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以上の結果から、消化管手術に対して術直前にDexamethasoneを8mg単回投与することの有用性が示されたことになる。今後、ステロイド投与による術後の抗炎症作用により、より重篤な術後合併症を軽減できたり、術後の補助化学療法の継続性が向上したりして、生存率にも影響しないかを検証する大規模臨床試験の結果を期待したい。
デキサメタゾン (Synonyms: Dexamethasone; Hexadecadrol)
PONVの発生頻度は25~30%であるため、手術を受けるすべての患者に予防策を講じることは、医療経済的側面からも好ましくありません。
(PONV)の療法に関する。特に、高BMI、即ちBMIが約30以上の患者におけるPONVの療法 ..
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口腔外科手術後の悪心嘔吐予防に対するオンダンセトロンの効果の検討
5-HT(3)拮抗薬は、効果を高めて効果的にデキサメタゾンと組み合わせることができます。 ..
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